コラム

地面師について

今、「地面師たち」というドラマが話題となっていますが、意外とみなさん地面師というのは知らないのではないでしょうか。私もドラマの下敷きとなっている7年ほど前に発生した「積水ハウス地面師詐欺事件」で初めて知りました。私が新卒でサラリーマンをしていて5年目だったかと思います。被害総額は55億円であり、本人確認や書類のチェック不足と早く購入しなければという思いが先走った焦りが招いた大手デベロッパーらしからぬ事件でもありました。

地面師とは

簡単に言うと土地の所有者および売主に成りすまして買主と取引し、多額の現金をせしめるという詐欺行為をいいます。なぜ、このような詐欺行為ができたかというと、第二次世界大戦後、日本が焦土と化し、土地と建物の登記簿謄本など書類関係が都市部を中心に消失してしまったことに端を発しています。また、戦争により、多くの人命が失われ、戸籍謄本なども焦土化により焼失してしまったということもあります。要は、だれがその土地を持っていたかがわからなくなってしまったのです。その後、日本は高度経済成長を経て、土地ブームが到来、そしてバブル経済に発展し、土地は価格が上がり続けるという土地神話が発生します。そのため、昭和時代は特にバブル経済のころ、地面師による詐欺事件が多発しています。

地面師対策

現在では、以前ほど日本全域については、土地の値上がりはしておらず、沈静化しているわけですが、東京においては、東京五輪前より値上がりが顕著であり、ちょうど事件が発生したのは2017年とちょうど五輪の4年前でした。現在では2025年の大阪万博に向け、大阪の土地も値上がりしています。よって、今後も地面師の被害がないとは言い切れないと思います。

ただし、宅建業法も改正に改正を続け、参入者にかなり厳しいものとなっていますし、印鑑証明、登記簿謄本も電子化されているので、かなり難しい状況にはなっております。はっきりといえば、信頼のおける不動産業者との取引が一番現実的であり、被害を受けないようにする担保であると思います。

あとがき

自然災害や戦争はある意味、人の人生を変えてしまうものであります。可能であれば、戦争に引きづりこまれたくはありませんが、昨今の状況を垣間見ると、再び戦争に引きづりこまれる可能性は否定できないでしょう。また昨今の異常気象は自然災害を引き起こし続けています。いつ、自分の土地家屋が自分のものであるという証明ができなくなるという事態は自分の身の回りの近くに潜んでいるのです。そして、そこに付け込むのが地面師たちなのです。

余談となりますが、西武グループを1代で巨大組織とした堤康次郎は関東大震災の直後、一家全滅したようなところの焼跡に、かたっぱしから「堤康次郎所有地」と書いた棒杭を立てたそうです。そしてどこからも文句がでなければそのまま、出れば法廷でお抱えの弁護士を使って法廷で、所有権を証明する物的証拠を出せと争ったといいます。